前節で導入したガウスの法則を使って、線電荷による電場を求めてみよう。
まずはガウスの法則の復習から。 ガウスの法則は以下のように書ける。
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… (1) |
左辺は、ガウス面と呼ばれる任意の閉曲面Sに関する電場の面積分で、
Sが囲む空間から出てゆく電場の総量を表すのであった。
右辺は、S内の空間の電荷の総量である。
線電荷とは、ある線の上に電荷が分布していることを言う。
ここでは、無限に長い直線に一様に電荷が分布している場合を考えよう。
電荷密度はλ(ラムダ)とする。
線電荷の電荷密度とは、単位長さあたりの電気量のことを表す。
SI単位(国際単位系)では、1メートルあたり何クーロンの電荷を持っているか
ということを表す量になる。
線上に電荷を分布させるには、電気を良く通す線状の物体を
用意しなければならない。 電気を良く通す物体は導体と呼ばれ、
金属はその代表である。 ここで扱う線電荷は、線状の導体、すなわち
針金のようなものを帯電させていると考えればよい。
導体とは逆に電気をほとんど通さないものを絶縁体、または誘電体と言う。
導体と絶縁体の中間的な性質のものを半導体と言う。
まず、この直線電荷がどのような電場を作るか、電気力線を描いて
考えてみよう。 λが正の値を持つとすれば、直線から外向きに電場が発生する。
点電荷による電場は全方向に向かって発生していたが、
電気力線同士は反発しあうことから、線電荷による電気力線は
線電荷に垂直な方向のみに発生していると考えられる。
これを図示すると以下のようになる。
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… (a) |
黒が線電荷で、青が電気力線である。 電気力線は途中で途切れずに
伸びてゆくものであるが、ここでは図がわかりにくくならないように
途中で切った。 この点はご了承いただきたい。
もちろん、電気力線はこの方向にのみあるものではなく
全空間に分布していることを注意しなければならない。
電場の様子がわかったので、今度は具体的にどのような式になるか
求めてみよう。 電場の方向は上の図のようになっているので、今度は大きさを求める。
電場の大きさは上の図から、線電荷からの距離rにのみよると考えられる。
電場の大きさをE(r)とする。
このE(r)を求めるために、ガウスの法則を使う。
ガウス面Sは任意のものを選んでよいので、
できるだけEを求めるのに都合の良いものを選ぼう。
この際、線電荷の周りの対称性に注目して、
線電荷を中心軸とする円筒形のガウス面を考えると良いだろう。
底面の半径をrとする。 高さは1とすると計算が楽になる。
図にすると以下のようになる。
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… (b) |
上の2つの図を見比べると、ガウス面の側面と電場は常に直交していて、
ガウス面の底面と電場は並行であることがわかる。
ガウスの法則の面積分は、電場と面が直交する部分のみを積分するので、
側面の積分のみを行えばよい。 さらに、側面では電場は一定の大きさを
持つので、積分に関係ない定数になる。 残った積分の部分は、
ガウス面の側面の面積になる。
よって、ガウスの法則の右辺は
以下のように計算できる。
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… (2) |
次にガウスの法則の右辺を計算しよう。 右辺はガウス面内の全電荷/ε0
である。 ガウス面内の電荷はλ×1なので、λ/ε0となる。
これが先ほど計算した左辺と等しいので、
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… (3) |
となり、電場の大きさが求められた。 電場は実際にはベクトル場であり、
方向は線電荷から外向きである。
今回の結果は、逆2乗則でなく逆1乗則になった。
これは、電気力線の様子を創造してみれば簡単に理解できることであろう。
点電荷の時には電気力線は3次元的に全方向に広がっていったので、
球の表面積に反比例した。 今度は2次元的に全方向に広がっていくので、
円周の長さである2πrに反比例するのである。
同じように、電荷が平面に一様に分布している「面電荷」を考えると、
電場は面からの距離によらず一定になることがわかる。
面の上側では電気力線が上を向き、下側では電気力線が下を向くため、
電気力線の量が距離によらず一定になるからである。
線電荷の場合と同じようにガウスの法則を使うと電場の式を
簡単に求めることができるので、是非やってみてほしい。
このように、ガウスの法則を使うと実際の電場を求めることができる。
しかし、静電場(時間変化しない電場)の法則はもう1つある。
次項では、静電場に関するもう1つの法則を紹介し、
電場が電位と呼ばれる量で表されることを説明する。
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