前節で導入したアンペールの法則の積分形を実際に使って
磁束密度を求めてみよう。 まずはアンペールの法則の復習から。
アンペールの法則積分形は、以下のように表される。
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… (1) |
左辺は任意の閉曲線での磁束密度の面積分である。
右辺は真空の透磁率という定数と、C内を通過する全電流である。
Cは電流に対し右ネジの方向とする。
ここでは、面電流により発生する磁束密度を求めてみよう
(何故ここで面電流を扱うかというと、私は人生初の、
そしておそらく生涯最後の「不可」を
この問題が解けなかったおかげで賜ったからである!)。
面電流とは、ある面上を流れる電流である。
ここでは、無限に広い平面上を一定の方向に向かって定常的に流れる
電流を考えよう。
電流面において、流れに垂直な方向1mあたりJアンペアの電流が
流れているものとする。
磁場は電流に対して右ネジの方向に発生する。
このことから、面電流による磁場は以下の図のオレンジの部分のように発生すると
考えられる。
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… (a) |
電流面は進行方向にも無限に続くと考えているが、図では
適当なところで切っている。
対称性より、図のように面に垂直な磁場が発生すると考えられる。
磁場の形がわかったので、アンペールの法則を使い磁束密度の大きさを
求める。 磁場の形を考えて、閉曲線Cは上の図の緑の部分のような長方形に
取ると良いだろう。
C上の左右の辺は磁場と直交し、上下の辺は磁場と平行になっている。
よって、線積分は上下の辺のみを考えればよい。
また、上下の辺において磁束密度の大きさは一定であるので、
積分は上下の辺の長さに磁場の大きさをかけ合わせたものになる。
一方、C内を通る電流はJとなる。
以上のことから、磁束密度の大きさをBとするとアンペールの法則により
以下のように計算できる。
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… (2) |
面からの距離rによらない一定の値になった。
これは、面からいくら遠ざかっても同様の磁場が発生しているということを表している。
電荷の作る電場の場合は、点電荷は逆2乗則(クーロン力)、線電荷は逆1乗則、
面電荷は定数になった。 同じように、電流の作る磁束密度も
直線電流は逆1乗則(アンペール力)、面電流は定数になった。
これらは磁力線では想像しにくいが、電気力線を想像すると比較的わかりやすい
性質である。
このように電場と磁場は類似した性質を持っている。
面電流の場合と同じように、対称性が利用できれば電流による磁場は
アンペールの法則を使って簡単に求めることができる。
しかし、積分範囲で磁場が一定であるなどの対称性がない場合は、
アンペールの法則で磁束密度を求めることは難しい。
そこで、次節では磁場に関するビオ・サバールの法則を導入する。
これはアンペールの法則と等価な式であるが、アンペールの法則で
直接求めるのが難しい電流に対して効果を発揮する。
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