新イシカワ電磁気学−電磁誘導


 静電磁場に関して重要な式は4つあったが、 そのうち3つに関しては前節で時間変化する場合に拡張した。  ここでは、残りの1つである 
   … (1)

の拡張を考える。  この式は、静電磁場においては渦状に回転する電場は発生しないという ことを表しているのであった。 
 今までのところで、電荷は電場を生み、電流は回転する磁場を生み、 電場の時間変化も回転する磁場を生むということを扱ってきた。  まだ扱っていないのは磁場の時間変化である。  そこで、上に示した式と磁場の時間変化に何か関係があるのではないかと 想像することができる。 

 磁場の時間変化とは、例えば磁石を動かすことである。  ある回路Cに向かって磁石を動かすと、 図のような方向に電流が流れることが実験により知られている。 
   … (a)

このような現象は電磁誘導と呼ばれている。  図を見るとわかる通り、磁石を近づけると回路内を通過する 磁束密度の量が多くなっている。 すると、右ネジの方向と 逆方向に電流が流れる。 

 ここで発生する電流も磁場を作る。  その向きは、電流から見て右ネジの方向であるので、 磁石のつくる磁場と反対の方向になる。  つまり、電磁誘導により発生する電流は、磁場の変化を 抑えようとする方向に流れていることがわかる。 

 なぜ電流が流れたかについて考えてみよう。  考えられるのはローレンツ力である。  磁場によるローレンツ力は運動している荷電粒子に作用する力であるが、 動いている荷電粒子にしか力を及ぼさないのであった。  ここでははじめの状態では電流はなかったと考えるので、 荷電粒子は運動していなかったことになる。  すると、磁場によるローレンツ力では説明できないことになる。  そこで考えられるのが電場による力である。  電流は回路C上を流れているので、回転する電場が発生したことになる。 

 静電場では、電流は電位差にしたがって流れる。  しかし、今考えている状況では電場の回転成分が発生しているので、 「電気的高さ」である電位を考えることはもはやできない。  なぜなら、回転する流れを生じさせるような高さは想定不可能だからである (エッシャーの水路の絵が実際に存在できないのと同じである)。  そこで、電位差の代わりに起電力という概念を使うことにする。  これは静電場では電位差と同じ量で、電流を発生させようとする力のことを表す。  単位はVである。  静電場において、電位差が電場に沿った線積分で表現できたことを 拡張し、起電力を電場に沿った線積分で定義することにする。  起電力は「高さ」に相当する量ではないので、積分する経路によって値が変化する (「不定積分」できない)。 

 電磁誘導現象を式で表すと以下のようになる。 
   … (2)

ただし、φは回路Cの起電力で、磁場に対して右ネジの方向を正としている。  起電力は電場に沿った積分で考えるので、
   … (3)

となる。 Cは回路に沿った右ネジの方向の経路である。  電磁誘導において起電力は右ネジの方向と逆に生じるので、 式ではマイナスの符号がついている。

 Nは回路内を貫く磁束である。  磁束は「モノポールは存在しない」で 磁極の強さとして導入したが、ここでは面を通る磁束密度の 総量と考えた方がよいだろう。 磁束は磁束密度の面積分で表せる。  すなわち、
   … (4)

である。 ただし、Sは回路で囲まれる任意の面である。  この量の時間変化が電場を生むのである。 

 これらを使って電磁誘導の式を書き直すと、以下のようになる。 
   … (5)

例によって積分と微分の順序を交換した。 磁束密度は場所と時間の 関数なので偏微分に直した。  この式はファラデーの電磁誘導の法則と呼ばれる(「ファラデーの法則」と言うと 電気分解の法則になるので「電磁誘導の」をつける)。  物理的意味は説明した通り、磁場の変化が渦状に回転する電場を生むという ことである。 

 ファラデーの電磁誘導の法則に対しても微分形を求めておこう。  ストークスの定理を用いて電場の線積分を面積分に変え、 被積分関数を比較する。 
   … (6)

前節と同じように電磁場を左辺にまとめて書いた。 


 これで電磁場に関する、特に重要な4つの法則が全て揃った。  これらの4つの式はマクスウェル方程式と呼ばれる。  次節は今までのまとめとして、マクスウェル方程式について見ていこう。 


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