「スカラー場とベクトル場」で
∇演算子を導入し、前節で∇を内積によりベクトル場に作用させる
divを紹介した。
ここでは、∇とベクトル場の外積であるrotを扱う。
ナブラの定義をもう一度書くと、以下のとおりである。
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… (1) |
あるベクトル場Aに対して、ナブラを外積によって作用させた
結果出来るのはベクトルである。
こうしで出来るベクトルはローテーションと呼ばれ、rot Aと書く。
Aのローテーションの計算は以下のように行う。
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… (2) |
外積の計算は複雑で間違えやすいが、この形はよく出てくるので
よく練習しておくとよい。
ベクトルAは位置の関数だったため、rot Aも
位置の関数になる。 よって、このベクトルはベクトル場になっている。
rot Aがどのようなベクトル場になっているか
考えよう。
まず、外積であることの特徴として、
z成分にはAのz成分やzによる微分は含まれない。
そこで、まずrot Aのz成分について考える。
これはxとyに関する要素のみにより出来ているので、
xy平面で考えればよい。
この成分を偏微分の定義を用いて書き直すと、以下のようになる。
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… (3) |
この値が正になる場合について考えてみよう。
xy平面において辺の長さが凾、凾凾フ長方形を考える。
このとき、上の微分の定義に現れるAの成分を
図示すると以下のようになる。
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… (a) |
例えば、図のようにAのy成分がx方向に増加し、
Aのx成分がy方向に減少する場合にrot Aの
x成分が正の値をもつ。
図の正方形に注目してみると、このような矢印に相当する力が
かかっていたとき、正の方向に回転することがわかる。
こののことから、rot Aが値を持つ場合は
ベクトル場が渦状に回転していることがわかる。
ローテーションは日本語では回転と呼ばれている。
x成分、y成分も同様に、回転する要素がある場合に
値をもつ。 これらからなるベクトルは、
渦の方向に対して右ネジの方向に発生する。
例えば、上の図のようにxy平面で反時計回りに回転が生じている場合、
rot Aはz方向になる。
回転の方向が逆になると、ベクトルは−z方向を向く。
風の速度分布の例で考えると、ローテーションが
生じるのは竜巻、台風などである。
台風の場合は空気の流れの渦は地面と平行に出来るので、
ローテーションは地面と垂直に出来ることになる。
ローテーションが生じる代表的なベクトル場には
以下のようなものがある。
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… (b) |
この場合、ローテーションは画面から手前方向に向かって生じる。
他にも、以下のような場合にもローテーションが生じる。
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… (c) |
この場合もやはりローテーションは奥から手前に向かって生じる。
ここまでのところでgrad、div、rotを紹介したので、
これらの合成演算について少し紹介しよう。
まず、以下のような関係がある。
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… (4) |
これは、スカラー場の勾配は回転しないことを示している。
スカラー場を山の高さのようにイメージしたが、
その勾配を考えたときに回転するようなベクトル場は
ありえない。
山を上りつづけて回転が存在する(元の場所に戻ってくる)ことは
絶対にないのである。
他には、以下のようなものもある。
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… (5) |
これは、回転は発散しないことを表している。
ローテーションはベクトル場の回転成分のみを抽出する操作である。
その操作によって得られたベクトル場には湧き出し・吸い込みを
表す要素は存在しない。
以上でスカラー場・ベクトル場の微分演算は終わり、
次節からは積分に入る。
ベクトル場の積分は、1変数スカラー関数の
積分とは大きく異なっている。
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